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折れて海岸に漂着したり、海底から採取されたりした一部のサンゴ(宝石サンゴ)は見た目の美しさにより、古代から世界各地で宝飾品として使用・取引されてきた。日本の宝石協会ではサンゴを3月の誕生石としている。結婚35周年を珊瑚婚式ともいう。仏教における七宝の一つ。 サンゴは生息海域が限られ、成長が遅いにもかかわらず現代において宝飾品需要が高まっているため、資源保護が課題となっている。古くから珊瑚が珍重され、密輸や乱獲が大きな問題となっている中国の申し入れにより、Paracorallium japonicum (アカサンゴ), Corallium elatius (モモイロサンゴ), Corallium konjoi (シロサンゴ), Corallium secundum (ミッドサンゴ)の四種が「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」附属書Ⅲ類に掲載された。2008年7月1日より国際輸出の際は、輸出国管理当局が発行する輸出許可書、または原産地証明書等が必要とされている。取引規制の機運はさらに高まっており、2016年のワシントン条約第17回締約国会議(COP17)でサンゴの資源量や貿易状況を議論する場を設ける提案が採択された。2017年の付属委員会で、各国がサンゴの資源管理や流通について2018年夏に報告することが決まった。 日本では東京都、高知県、沖縄県などで各都県の許可を受けた漁船により年間5t程度のサンゴが採取されている。加工前の宝石サンゴの価格(2017年時点)は1kg100万円以上と2011年比で5割以上高くなっており、出漁船が増える傾向にある。乱獲防止のため採取方法の規制や禁漁期間が設定されているものの、内容は各都県にゆだねられており、日本政府としての統一した規制はない[1]。 西洋でも宝石サンゴには長い歴史と様々な関連文化がある。ギリシア神話によると、英雄ペルセウスが怪物メドゥーサの首を掻き切った時、溢れた血からペガサスが、地中海に滴り落ちた血の雫から珊瑚が生まれたとされている。ローマ時代から護符として愛用された。 12世紀のカスティリヤ王アルフォンソ10世がまとめた『宝石誌』には、「珊瑚は金星と月に結びついた宝石」と書かれている。イタリアの農婦の間の俗信では「持ち主の女性の月経の間は珊瑚の色が褪せる」と考えられていた。伝統的に金星は肉体的な愛を司るヴェヌス、月は妊娠をつかさどるダイアナに結びつく惑星とされている。イタリアでは古くから地中海の珊瑚C. rubrum(ベニサンゴ)を使った工芸が発達し、海にちなむことから船乗りや血のような赤い色から妊婦の厄除けとして珍重されてきた歴史がある。 赤い珊瑚で角を象った「コルノ」という護符は厄除けとして現在でもよく好まれる。中世の夢判断においては夢に珊瑚が現れると病から回復する予兆であるとされた。 一方で、珊瑚の色が褪せることは持ち主の健康が脅かされている予兆だと恐れられていた。1584年にイワン雷帝に謁見したサー・ジェローム・ホーシーは、皇帝が美しい珊瑚をホーシーの手に取らせて間違いなく美しい色合いをしていると確認させた後、自分の手に乗せた珊瑚が「棺衣の色」に白く褪せて自分の死を予知している。と言ったと記録している。三年前に癇癪から妊娠中の皇太子妃を蹴り殺し、妻を助けようとした皇太子を撲殺、皇太子妃の身ごもっていた初孫をも殺害しており失意の底にあった皇帝は、ホーシーが謁見して間もない1584年の3月18日に自らの言葉通り発作を起こして死んだ。 日本では奈良時代以来、シルクロードを渡ってきた地中海産珊瑚を珍重していた。産地イタリアでは地中海珊瑚は乱獲が原因により絶滅に近い状態に陥り、代替品が求められていた。 19世紀、土佐沖でシロサンゴが発見されるや否や、インドに駐留していたイタリア商人が中国商人を通じて買い付けイタリアに送った。次いで土佐沖でアカサンゴ、モモイロサンゴが発見されるにいたり、日本が開国を決めるとイタリアの珊瑚商人が自ら買い付けに土佐に乗り込んだ。イタリアの人々は久方ぶりに輝くような赤や桃色の珊瑚を手に取れるようになった。 日本産珊瑚のうち、日本、中国、台湾で最も人気があるのはアカサンゴで、そのうちでも深みのある赤を市場では血赤珊瑚(アメリカでは「オックスブラッド」ヨーロッパでは「トサ」などの名称で呼ばれることがある)と呼んで最高ランクとされ、台湾や中国の富裕層に人気が高く2国の発展に伴い値段の高騰が激しい。この人気のため日本の海域でアカサンゴが大規模に密漁されている(中国漁船サンゴ密漁問題)。 モモイロサンゴは桃色の名を冠するものの朱色から桜色まで色調が広くアカサンゴより大型のものが多いので広く使われる。ヨーロッパではアカサンゴより本種が人気。本種も含め透明感のある淡いピンク色のものは市場では天使の肌という意味の「エンジェルスキン」とロマンチックな名で呼ばれるが、日本の流通業界では「ボケ」と呼ばれている。一般的に植物のボケの花の色に由来するといわれるが、商売上手のイタリア人が日本人や中国人の仲買人を騙すために「色がぼけていて安価でしか買いとれない」と嘘をついて安く仕入れて大もうけしたという俗説もあり、正確な語源はいまだに不明である。